広々としたフロアに着物が入った引き出しがずらりと並び、産着から七五三、浴衣、卒業式に人気の袴、成人式の振袖、結婚衣裳、留袖と、着物に関する全てが揃い、販売だけでなくレンタルも。昔ながらの呉服店の持つ敷居が高いイメージを覆し、それでいて頑固 に「本物」しか置かない...一代で事業を興し、1997年に現在のビルを建てた灰野俊邦さんのこだわりが、すみずみまで行き届いています。

茶道、能、歌舞伎、謡曲といった晴れ舞台にも精通し、ふさわしい装いを提案できる、稀有な存在です。「お得意様の手持ちを全て把握し、今までにない色柄、合わせられる帯までご提案できる」という高いプロ意識が真骨頂。

「私は本物しかおすすめしません。娘さん、お孫さんへと受け継いで、永く楽しんでいただけるからです。たとえば大島紬であれば、合わせる帯で20代も70代もお似合いになりますよ。娘さんのためにと仕立て直しをされる方が多いのが嬉しいですね」。

大島紬であれば、手織りの本物を産地から直送。京友禅であれば、一流の作家が描く花柄がフロアを彩ります。「小さいお子さんの浴衣は、引火するなどの万一を考えて、綿素材しか扱いません」と、商品選びのポリシーは一貫して、自分の持ち物を選ぶよりも真剣な灰野さん。お客様本位の真摯な取り組みに裏付けられているからこその、やわらかな笑顔が印象に残ります。

2015年11月現在